前作の『白衣性恋愛症候群』には衝撃を受け、いまでも大好きな作品のひとつとして私のなかに君臨しています。
本作『白衣性愛情依存症』も、膨れ上がってしまった私の期待を裏切らない、百合好きには非常におすすめできる恋愛ADVでした。
- 公式サイト:白衣性愛情依存症 -白愛- | キラ☆ふわ看護学生アドベンチャーゲーム
- 発売元:工画堂スタジオ
- 機種:PSVita
- ジャンル:キラ☆ふわ看護学生アドベンチャーゲーム
- 発売日:2015年4月30日
以下、重大なネタバレあり。
本作『白衣性愛情依存症』をプレイしてみようという気が少しでもある方は、これ以上読まずにすぐに白愛をプレイし始めてください。
ネタバレなしでプレイしたほうが絶対に楽しめます。ネタバレなんて見てしまったらもったいない。
良かったところ
- ストーリー。
衝撃的な展開や、エンディング直前まで謎だらけなのは前作同様。
「キラ☆ふわ」? そんなの「嘘だよ」。
複数のルートを攻略してすべての謎を解いていくのが気持ちいい。 - 徹底した百合の世界。
女性しか存在せず、同性でもフツーにごく自然に当たり前のように好き合える世界。
iPS細胞によって同性間で子どもを作ることも一般化している。
恋愛ADVにありがちな、海でナンパしてくるチャラいモブキャラまで女性という徹底ぶり。
百合好きにとって愛すべき世界観である。 - ぶっ飛んだバッドエンド。
もはやこのシリーズの見どころのひとつ。 - 既読スキップ、バックログ、クイックセーブなど、ADVにあるべき基本的なシステムを完備。
見たことのあるエンディングはタイトルメニューの「回想」から何度でも見られる。
イマイチだったところ
- 難易度が非常に低い。
選択肢が少なく、選んでもほとんど分岐しない。 - 立ち絵にリップシンクや瞬き、表情の微妙な変化といった動きがない。
- グッドエンドの出来に差がある。
詳しく書くと、さくやルートのグッドエンドの質が高すぎて、他のグッドエンドがイマイチに思えてしまう。
特にかえでルートはストーリーも含めて全体的に薄っぺらい。 - 主人公からヒロインとして選ばれなかった子同士がくっつくのがちょっと辛い。
攻略日記
さくやルート
さくや(画像左)が本当にかわいい。このポーズが一番好き。
ちなみに右は主人公のあすか。
結論から言ってしまえば、白愛はさくやの物語だし、他のヒロインルートもさくやルートを補完するために存在するようなストーリーだしで、もはや他のヒロイン攻略中も私にはさくやしか見えていませんでした。
それは置いといて、初回プレイはさくやルートを目指します。
最初に登場したヒロインがなおちゃんで「なおちゃんめっちゃかわいいな…」って思っていたのですが、さくやが登場してなんやかんやしているうちにさくやに惚れてしまっていました。
早くさくやとイイ感じになりたいのに展開は遅く、なかなか個別ルートに入れない。
ルートに入って「キター!」と思っていたら急にサスペンスに。このシリーズは相変わらずですね…怖い…
最初にさくやを選んでしまったのは重すぎたかも、と思いました。
そして初回プレイはさくやルートのグッドエンドでした。
中盤で個人的にさくやのことをめちゃくちゃ好きになった割には、グッドエンドのラストであまり感情移入できなかったけれど、良い話でした。本当に良い話だった。
でもこれでもかってくらい要素詰め込み過ぎだろ!
グッドエンドではきょうこが、最終的にさくやではなくあすかを選んでるっていうのが、本当によく分かってる。
あすかもきょうこもさくやの死にはあれほど苦しめられたのに、そのさくやが二人の子どもとして生まれ変わって復活して、彼女たちの間にあった悲しみをほとんど消し去ってくれました。
完璧なエンディングと言わざるを得ません。
特定の人を好きな人同士が結ばれるの、良い。新たなジャンルに目覚めそうです。
そして急にモテモテあすか!
まあ、いくらポンコツあすかといえども一応は恋愛ADVの主人公ですしね。最終的にはどのヒロインと結ばれてもおかしくないわけですし。
クリアしたあと、何度も彼女たちのことを反芻してしまいました。
あすかはきょうこといつまでもラブラブで、さくやもいい人を見つけられていたらいいなあ。
末永くお幸せに。心からそう思います。
とはいえ、あすかが元気なさくやと恋愛し続けられなかったのは少し悲しかったです。
お次はさくやルートのバッドエンドを見ました。
他のヒロインのバッドエンドを見たあとだと、本当にさくやは優遇されているなーと感じます。
さくやは死んでしまうだけで(それだけでも大惨事なのだけれど)おかしくなってしまわないし、あすかのサイコパスぶりも大人しめ。
やはり白愛はさくやの物語だと思わずにはいられないのでした。
おまけの激レア(?)冬服さくや。
かえで先生ルートの一場面でしか見られません。
なおルート
次はなおちゃんルートへ。
初回プレイ中に最初に「いいな」と思ったのはなおちゃん。
最初に出てくるヒロインがなおちゃんだからしょうがないですよね。
声も立ち絵もほんっとにかわいい。
ツインテールや妹キャラ、声優の加隈亜衣さんのかわいらしい声、どれをとっても単体では私の好みの要素ではなかったのに、悩殺されました。かわいすぎでしょう。
立ち絵はどのポーズもクオリティが高くて、個人的に白愛で一番立ち絵がかわいいと思っています。
一番撮ったスクショはなおちゃんでした。
そして非常にあざとい。
「こいつあざとい!」って分かってるのに不思議と嫌いになれなくて、もうほんとかわいいは正義ですね。
自分がやってきた悪いことをあすかに暴いてもらいたい気持ちと、あすかとのいまの関係を壊したくない気持ちがごちゃごちゃになってるなおちゃん、切ない。
そしてなおちゃんルート初回はバッドエンドへ。
うん、最後の選択肢を選んだ瞬間から予感はしていたんです。
でも白愛だから、どっちの選択肢が正解かは自信が持てなくて。
そして…バッドエンド恒例のやばい展開へ。
先にバッドエンドに行くとその記憶を引き摺ってしまって辛いけれど、さくやルートのように後からバッドエンドを見ると幸せな記憶が上塗りされてもったいない。
とにもかくにも、このシリーズのバッドエンドのインパクトは強すぎです。
「インパクト」というよりは「ショック」、いやそれより上の「絶望」のほうがふさわしいですね。
そして迎えたなおちゃんルートのグッドエンド。
素直に喜べない…。なんなんだ君たち。
キスしてりゃいいってもんじゃねぇぞ!(怒)
二人が幸せなのは理解できるんだけれど、なおちゃんルートのこれまでの凄まじい展開を考えるとなんだかありきたりで安っぽく感じてしまう。
でもでも、なおちゃんルートのストーリーはとても良かったので、さくやに次いでお気に入りのヒロインです。
余談だけれど、怪談話でなおちゃんのこの顔が出た瞬間に、シリーズファンならきっと勘付きましたよね。
この顔がこのシーンだけで使われるなんてことはないはずなので、「絶対この子悪い子や…(もしくは何か隠してる…)」って思いましたもん。
いつきルート
次はいつきルートへ。
さくやからしたら、幼い頃に好き合ってやっと再会できたあすかも、いま付き合っているいつきも失うという、一番辛いルートでした。
このルートではさくやは家庭の事情で留年することになっているし、救いがありません。
さくやのメンタルが壊れてしまわないか心配です。
私が最初にさくやルートに行ってしまっただけに、さくやのことを考えると心が痛くていつきに対して真剣になれません。
あすかを思って努力してきたいつきのことを誰よりも見てきたさくや。いつきを想う気持ちも分かるけれど、さくや自身はそれでいいの? 切ない。
誰だいつきルートなんてものを作ったのは!
いつきはモブキャラにしておけば良かったんだ!(全国のいつきファンを敵に回す)
しっかしグッドエンドのいつきは本当に楽しそうですね。その顔。
いつきのことだけを考えるなら、おめでとうとしか言えません。本当に良かったね。
いつきルートのバッドエンドでのあすかはなかなかにサイコパスでした。
どうしてバッドエンドだとこんなサイコパスになってしまうん、あすか。
愛って怖い、と思うけれど、そこまでの愛があったか?って感じのシナリオなんですよねー。
さくやルートのバッドエンドではまだしも。
かえでルート
最後はかえで先生ルート。
やっぱり私にはさくやのインパクトが強すぎて、どうしても比べてしまって他のヒロインにはドキドキできませんでした。
どのルートへ進んでもさくやを想う気持ちが消えず、むしろ一度さくやエンドを迎えたことで事情を理解できているからこそ、別ルートでのさくやの新たな一面に出会うたびにさくやへの想いがますます強くなっていった気がします。
かえで先生はこれまでの三人のルートには全然関わりがなかったので新鮮味が感じられそうで楽しみ。
どんな驚き展開を見せてくれるのか。
と思っていたらバッドエンドに入ってしまいました。うーん。
そのあとグッドエンドも見たけれど、うーん。
なんだこのストーリー。ハズレ?
個人的にかえで先生の好きなところが中の人(今井麻美さん)ってところしかない。そう、余談ですが私は『アイドルマスター』の千早が大好きなのです。
タイトルメニューの「憩いの場」で本人も「一発で録った」と言っていたし、かえで先生は前半パートであまり重要な役割を持っていないしで、後付けキャラクターなんじゃないかと思ってしまったり。
他の三人、さくや、なおちゃん、いつきのルートがいい感じに絡まっていたので、独立しているかえで先生のルートが浮いてしまっています。
浮いているくせに薄っぺらいので、ほんとに「どうしたの?」って感じでした。
全エンディングを見た感想
全ヒロインのグッドエンドとバッドエンドを見たあとでは、「白愛はさくやの物語」としか考えられなくなりました。
他のヒロインはさくやルートを理解するためのおまけなのでは…というのは言い過ぎですね。
幼い頃に好き合っていたという事実によって、あすかがさくや以外と結ばれることに違和感を覚えてしまいます。
さくや以外の他ルートでは、さくやと結ばれるという運命を覆せるほどの「ヒロインを好きになる理由」が薄く、いつもいつの間にかあすかがヒロインのことを好きになっていて私は置いてけぼりでした。
ほんとにいつ好きになったの? びっくりです。
ついでに言うとさくや以外のルートでヒロインと結ばれそうになると、いちいちさくやがかわいそうで胸がチクチク痛んで辛かったです。
私が最初にさくやルートに行ってしまったのが悪かったのかとか、でも他のルートでいろいろ知ってしまう前にさくやルートへ行けたことは幸せだったなあとか考えて、出た結論はやっぱり私はさくやが大好きだ、ということでした。
多分そういうことなんでしょうね。
いつきが好きな人は「白愛はいつきの物語」と思うかもしれないし、なおちゃんが好きな人は「白愛はなおちゃんの物語」と思うかもしれない。かえで先生の物語ではないと思うけれど。
私がさくやを好きすぎたのですね。
その他の雑感
前作『白衣性恋愛症候群』や、他の工画堂スタジオ作品の小ネタが入っているので、知っていると面白いです。
- 本作の主人公たちが通う看護学校は、白恋のヒロインのひとりであるなぎさ先輩の母校。
- 主人公の部屋に白恋のポスターが貼ってある。
なおちゃんだったら白恋をプレイしていてもおかしくないですね。 - スマホの着信音がたぶん白恋と一緒
- 街には変な人しかいない!
私は元ネタが分からないので余計にコスプレをした変な人にしか思えません。ここはアキバか?
白恋はそうでもなかった気がするんですが、本作は地の文が個性的です。
そういうものだと思えばなんとか受け入れられました。
一部のBGMが『サクラ大戦』っぽい。
感動的なシーンなのに「チャーラッチャーラーラーラー」とゲキテイのイントロが流れると意識がそっちに持っていかれてしまいます。なにせサクラ大戦ファンなので。
ギャルゲーとは違って、主人公の自分(あすか)も立ち絵で画面にいるのが不思議な感じ。
序盤に学校でめちゃくちゃ医療について触れていて、会話に出てくる医療用語も頑張って読んで学んでたのに、後半全く医療関係のことが出てこなくなるの、展開がガラッと変わってしまう2クールアニメっぽいなーと思いました。
おわりに
全員のグッドエンドとバッドエンドを見たのはもちろん、すべての選択肢も制覇。
前作の『白衣性恋愛症候群』と違って、個別ルートではグッドエンドとバッドエンド、両方一種類ずつしかエンディングがないのがちょっとガッカリでした。
いやーでもほんと、さくやルートが良すぎました。
悲劇大好き人間の私、大歓喜。
「あなたのお嫁さんになりたかった」
このセリフを何度バックログで繰り返し聞いたことか…
さくやがかわいすぎて切なすぎて死ぬ。さくやでなくて私が。
クリア後もさくやルートのエンディングのことを考えて幸せな気持ちになったり、切なくなったり。
願わくば、さくやルートのグッドエンドのあすかになりたい。
さくやを好きすぎて彼女を贔屓しすぎてしまった感は強いですが、本作はゲームを遊んでいないときも白愛の彼女たちについてあれこれ考えたくなってしまう、そんな魅力あふれる作品です。
百合好きには非常におすすめ。